これはnoteの転記です
実は未だ見たことがなく、4Kリバイバルをしていたのでせっかくだから、と見てきました
なお、事前知識完全の0。
一番の衝撃だったのは、この作品が20年前のものだったこと、なんですけども。
エンドロールが終わった後で2006って出てきてびっくりした。
あと、平沢進御大の音楽を聞いたのが、恥ずかしながら初めてで。
頭痛に効く、とか、そういう逸話は存じ上げてはいたんですけども……w
テクノなのに郷愁を感じる音楽を作られる方ですね……。
で、を書くのがこんなに難しい作品ある?
セキュリティをおろそかにすると大事件に至る侵入を許してしまうテクノロジーの恐ろしさと
老いを恐れて若さを求める老人の暴走
女を求めて倫理を捨ててまで地位にすがる男の妄執
優秀さに嫉妬してその心の醜さに溺れてしまう人間の愚かさ、
公私を切り分け過ぎて素直になれない自分に向き合う様、
そして、過去のトラウマとの決別と未来への一歩
くらいの様々あったのかな、なんか、ありすぎるんだよな、色々。
先進的なテクノロジーとそのセキュリティ
セキュリティ対策の大切さ、と文字にするとチープ。
でも今回の事件の発端でもあるので、いつの時代でも後回しにすると大変な部分だなwとなりました。
時田くんがここを後回しにして、DCミニの完成を先に目指してしまったことがすべての原因とも言える、というか。
先にセキュリティ面を固くしておけばこうはならなかった、というか。
結論から言えば内部犯だったわけですからどうとでもできた部分ではあるんだけども、この穴があったから外部犯かも、という論調も出せたし、だからこそ危険なのでもうやめろという指示も序盤時点ではまかり通るわけでね。
夢に侵入(共有)して精神病(不安症)を解決していくという治療法自体はそれこそ夢があるな~と思ってしまった。
夢とは脳が無意識に情報を整理する場所であるため、不安症などの症状が出てもその原因が本人にも思い当たらない無意識や封印している記憶だった場合、夢という場所で不意に原因が露出する可能性はあって、それはたしかに治療に大いに役立つだろうな、という気持ち。
侵入しないまでもモニターで外部観測・記録ができるだけでもだいぶ大きい。
夢って起きて少しでもすれば記憶から霧散してしまうので。
この作品に原作があることすら知らなかったわけですけど、初出が93年て…この発想を93年に?!という気持ち。
いつか読もうリストに入れました。
老いを恐れて若さを求める老人の暴走
この作品で事件の真犯人が判明してから夢が現実を侵食する大事になり、それが解決するまで、の終盤の様が、これ。
とはいえ序盤から明確に敵意を向けてるので何かしら裏でつながりがあるだろ、お前。という感じはありましたけどね、局長。
なので、「あぁやっぱり」という感じは強い。
どちらかといえば、パプリカが夢から醒めて千葉が局長の元へ向かい問いただしていたシーン、が実は未だ夢の中(多重夢)で突然局長が木の異形となって触手を伸ばしてくることにびっくりさせられたというか。
局長が犯人であること自体にはそこまで大きな驚きもないのでそういう魅せ方をするのは、それは、そう。
局長については「犯人だったなぁ」ということよりも、夢が現実に侵食するはじまり、局長の寝室の床に穴が開き現実が飲み込まれ始めている描写…の際に絶対に小山内くんと事後だったことのほうが衝撃でしたが。
事後描写は粉川警部とパプリカも導入の治療描写でふたりとも寝室でバスローブなので、治療以外にもなんかあったでしょ!えっちなことしたんですね!!って感じではありましたが…
局長全然裸に近くなかったか、記憶違いかな…。
悪いことを思いつく人っていうのは、まぁバカではないがちですが局長もその一人で
DCミニひいては「人の夢に入り込む」行為を悪意的に拡張すれば、他者の思考を乗っ取って自分のものにできる、という発想だった。
で合ってるよな?
これ以上老いたくない、というよりは、既に不自由になっている足をどうにかしたい、程度だったかもしれないんですが。
現実に侵食した夢からでてきた超巨大局長は自分の足で立っていることに歓喜していたものな。
あの瞬間あの空間は本当に現実なのか夢なのかが曖昧模糊としていて…
とはいえ、その狭間状態であったからあの老人は立てていたし、それを維持したいから「現実」を破壊して新天地を作ろうとゴジラよろしく町を破壊していたわけですが…。
それが最終的には赤ちゃんとなった千葉(若者)に吸引されて消滅する、というのは何たる皮肉というか。
人は老いるものであり、先人を吸収して後続の人が成長するものであるという隠喩のような気もしたし。
倒す、のではなく吸収されてしまうというのが、なんとも言えなかったな。
女を求めて自我を殺す男の妄執、嫉妬に溺れる愚かさ
これは、小山内くんの話。
さっき、小山内くんは局長と肉体関係があったんですね?!って感じだったわけですけど
その後のパプリカからの言及でおそらく氷室とも肉体関係があるんですよね。
言われてみたら確かに氷室の部屋を検分した際に男性グラビアの雑誌の塊があった。なんだ?と思ったんだ、あれ。
とはいえ小山内くん自身はパプリカ(千葉さん)を求めていたわけで。
彼自身はヘテロであるにもかかわらず、意中の女が欲しい故に本意でないままに男に抱かれて(抱いて?)いたということ?!になる。
氷室については、DCミニを盗みに行く、または悪夢を流しに行くときに自分の身体を使ったんだろうし。
局長については…どっちなんだろうな。
優秀すぎる人(時田)がいる以上自分の地位はここが天井であると悟ったときに、局長の好みが小山内で声をかけられて自分を殺してでも自分の見目を利用してしがみついてしまおうと思ったんだろうな。
それが巡り巡って、この事件に至った際に、意中の女を手に入れる好機だ!となって、あの瞬間局長の指示にすべて逆らっていたんだろうし。
その氷室をオイディプスだと揶揄するパプリカの言葉は、それは小山内に刺さるだろうな
一方で、氷室は結局どうだったのか、がずっとわかっていない。
時田とおそらく親友で、一緒にDCミニを開発していて
…というのは時田側の認識であり、彼の部屋では時田と氷室が写る写真では時田の顔の部分だけが切り抜かれ排除されていて
確かに彼を好いてはいなかったのでは?という描写があったし。
けれど、あの写真は小山内の細工でしかなくて、氷室は完全に「未完成のDCミニを保管・管理していた」から巻き込まれただけの純粋な被害者だったんだろうなあ、と思っています。
小山内の語る「氷室は時田の優秀さを羨んでいたのでは?」は、結局「自身のほうが見た目がいいのに千葉は優秀な時田に惹かれる」ことを羨んでいただけだったんだもんな(?)
すべてが終わったあと、時田くんは病室で意識が戻りますけど、氷室の描写はないんですよね。
パプリカが二人の夢に入った時、氷室くんの意識はがらんどうだった、と言っていたので眠ったまま狂気に潰されて死んでしまっていたのかな。
時田くんが氷室くんの真意を確認できなかったことだけがこの作品の中でずっと悲しい。
公私を切り分け過ぎて素直になれない自分に向き合う様
これは、千葉と時田くんの話。または千葉とパプリカの話。
まず、千葉とパプリカについて。粉川さんが千葉に会った瞬間に「パプリカなのでは?」と察する観察力すごいね?となる。
見ている側としては全く気づかないので(察しはするとしても…)
なぜあんなにも見た目も言動もすべて変えて別人として振る舞っているのか
は、未完成のDCミニを勝手に持ち出して勝手に治療と称して行動していることが研究所としてはアウトであるため、と考えていたんだけれど
島所長も知っている(何なら世話になっている?)なら、そこまで徹底的に変装する必要もなかったのに、と思ってしまう。
であれば、夢に投影する姿を自在に変えることができるので「パプリカ」の姿でいるのかな。
だから、千葉が一人のときに自分との対話でガラスに映ったり、夢が現実に侵食した際に現れてきたりしたのかな。
とも思うものの、おそらく映画最初の粉川との逢瀬は、多分実際に会ってるしなぁ…。
謎だ。変身してるのか夢の中だけの姿なのか…。
とはいえ、これは「映画のパプリカ」においての、それしか見ていない者としての千葉とパプリカへの解釈なんですけど
千葉は社会的立場(仕事内容)から、結構自分を律していて、その反動
…は言い過ぎとは思うんですが、自由気ままに動きたい欲なんかがパプリカに投影はされているとは思うんですよね。
夢なら好き勝手に動けていい、という明晰夢の頂点みたいな好き勝手さで動けるのも相まって。
にも関わらず終盤、時田くんを追いかけるのか夢の侵食を止めるのか、となった時、
パプリカは所長と中心地へ向かい、一方で千葉は時田くんを追いかけに行っていたんですよね。確か
(記憶違いだったら申し訳ないんですけど)
パプリカはあくまでも「夢側」の存在として「夢の暴走」を止めること、が目的だからたしかにな、とは思うんですが。
ここまで公私を切り分けていた千葉が、「公」である事件解決を後回しにして「私」である知人(時田くん)の安否を心配する、ことに彼女の本心がやっとでてきたというか。
いえ…時田くんが氷室くんの夢に入りに行った時点から心配はしていましたけど。
時田くんへの気持ちを認めて、時田くんを助けた千葉を見届けたパプリカが、千葉と一つに戻ること、で分離しすぎた公私が1つに戻って、最終的に局長を吸引しきるに足る容量を得られたのかな、などと思っている。
一方で、自分は恋愛感情の描写にあまり興味はないので千葉と時田くんについて触れる内容はそんなにないんですけど。
時田くんのことを気にかけまくってるけどもそんなにも『恋愛感情』のそれだったんだ?!と意外に思ったくらいですからね。
でも暴走してビルにはまり込んだ時田くんを引き抜き助ける千葉が、映画冒頭のエレベーターの中でぎゅうぎゅうな時田くんを助けるときの千葉と重なって
この『恋愛感情』の描写が突然の差し込みなんかではなくて、ずっと千葉が押し殺していただけで以前から抱かれていたものなのだろう描写となって
ねじ込まれた違和感を一切感じなかったのはとても綺麗で良かったです。
過去のトラウマとの決別と未来への一歩
うだうだと長くいろんなキャラへの感想を書いていたけれど、結局この作品で頭から最後までずっと根底で続いていたテーマは
粉川警部の悪夢とそこからの脱却だったな、と思っている。
作品の引きとして強すぎる突然のサーカスではじまり、
自分がその演目に巻き込まれ、逃走劇はさながらあらゆる名映画シーン切り貼りの連続で、
最後は自分が現在担当している事件の現場検証の場面。
そこから逃げ出す犯人(仮)を追いかけようとすると足元が崩壊していく…
それなのにあらゆる映画のシーンを切り貼りしている割に映画は嫌い。
…何かしら映画にトラウマがあることは流石によく分かるんですけども、あまりピンときていなくて、暗所恐怖症かなにか?と思っていました。
何度目かの夢で「カメララインが」「アイレベルが」と言い出して、やっと『撮る側』にいたことがわかる。
これは、結果的にパプリカがあの事件の最中も治療行為をしていてだんだん彼の深層意識を引っ張り出せていた、ということなんでしょうけども。
子供(学生)時代に趣味で作っていたか、それを何らかの経緯で台無しにされたか、こき下ろされたか…
とはいえ今は刑事なわけで、不安症としてトラウマになるほどか?と思っていました。
最後、とうとうパプリカがいないながらもバーテンたちに過去を語る内容で
やっと不安症の原因が、なにか問題・事件があったことを引きずっているのではなく、心残りが肥大化したものだったんだな、という咀嚼ができる。
一番自分では認識しづらい原因だなぁ、と思ってしまった。
一緒に作っていた作品は作りきれず
そのとき一緒だった友人は映画の道に進んだものの若くして死んでしまい
自分はいま一切その道を歩んでいない。
あの時一緒に完成させられていれば
もしそっちの道を進んでいれば
みたいなモヤモヤを思い出してしまうから映画には触れたくない、みたいな…。
だから、現場検証の被害者は自分(映画を作る道を諦めることで殺した自分自身)だし、
そこから逃げ出す影もおそらく自分(映画を作る道を諦めた自身)で、
それらの感情を掘り返して、向き合えたからこそ、その人影は旧友となり完成させられなかった映画のワンシーンを今度こそ完成させるべく引き金を引くことができる。
…結果その銃弾は逃走する小山内に当たるんですけど。
夢の混濁とは怖いですね。
事件の影で一連の治療を受けて、トラウマを乗り越えて、前に進むことができた粉川刑事の終盤の清々しさと、それを笑顔で見送る旧友の影はとてもよかった…。
余談として
「夢が犯されていく」というキャッチコピーではあるけれど、
たしかに他人の悪夢が脳に侵食していたけれど、最終的には「現実が夢に犯されていく」だったな。
そう言ってしまうと終盤の描写のネタバレであるからキャッチコピーにできないことは理解るんですがw
あと、終盤のすべてが解決して、夢が退却して破壊の爪痕だけが残った現実に対して、すごく心配しているのが
粉川がその事態に気づいた時日常パートで人がいたはずの事務所内はがらんどうで
直後シーンが変わって、笑顔の男性たちが並列して次々と投身していく瞬間があって。
彼の同僚って全員あそこで飛び降り死亡してしまっているのでは?と思っているんですが。
あの夢が侵食した現実で発生した破壊と負傷は現実に残り続けていたわけで…
彼らは島所長と同じく怪我で済んだのか、死んでしまっているのか、どっちなんだろうな。大惨事すぎる…。
さいごに、ほんとに私事なんですが、ちょうどこれを見たのと同時期に、あろうことかドグラ・マグラを読んでいまして。
ちょうどその中でもキチガイ地獄外道祭文の箇所を読んでいる最中でして。
というか映画始まるだいぶ前に映画館についてしまったので時間潰しに、本当に上演直前までそれを読み進めていまして…
そこからの開幕早々の島所長の投身自殺未遂直前の発狂演説(中盤の研究員の演説も含む)ですよ…
脳みそでやばい共演をしてしまって正気が死ぬのかと思った……。
島所長の演説は「狂った文章」なのではなく「口に出して読みたいセリフ」である、という感想をみかけて非常に納得していまして
キチガイ地獄外道祭文もまさに「口に出して読みたい日本語」なんですよね。
阿呆陀羅経なので、口当たりがめちゃめちゃいいんですよ。
そりゃ脳内で大共演コラボを繰り広げるわけ。
オセアニアじゃあ常識なんだよ。