2026-01-24

千年女優

これは9割noteの転記です 

実は未だ見たことがなく、4Kリバイバルをしていたのでせっかくだから、と見てきました
なお、事前知識完全に0。
そうです、パプリカと同じ。

事前知識
まじで何も知らなかったので、なんか不老長寿ものファンタジーなのかな~くらいの浅くぼんやりした想定で赴きました。
ある意味正解なのだけれども。様々な時代の役柄を演じるということは、様々な時代を生きたと言うことができなくもないので。

感想
〆の「だってあたし、あの人を追いかけているあたしが好きなんだもの」でボロボロに泣いてしまった。
自分は別に恋い焦がれている相手だの、忘れられない相手だの、一切いないんですけども。
「自分のことが嫌いでも、自分が好きな作品があったなら、『それが好きな自分』だけは好きでいていい」
(うろ覚え記憶要約)
という非常に大事にしてる言葉があるんですけども。それに通じてしまって。
ちなみにこれ言ったのはSoundHorizonのRevoです。よろしくおねがしいます

この作品の本筋とは全然ずれるのだけれど、「夢中で追いかけられる何か」を持てることは人生を歩むにおいて、常に強みであると思っていて。
それは趣味であっても推しであってもよくて。

結局彼女は「鍵の君」が好きだったわけじゃないんかい!と置いてけぼりをくらったように感じる人もいるのかも知れない。
けれど、「『好き』を追いかけている自分」が好き、であることは、どこまでも真理だと思っているので
一人の人にここまで執着すること、理解できないな~と思っていた僕は、逆にこの言葉で一気に彼女に共感できてしまい、感極まってしまった。

千代子にとっての「好き」が「鍵の君」という想い人であった、というだけで。
彼がいた(自分が出ている映画を見てくれるかも知れないと思っていた)から女優業を頑張れていて、彼と再会しようという約束をしていたから生きてきたのであって。
もっと早い時期に彼の死を知っていたら、空襲で飛び出したまま死んでいたかも知れない。
女優業なんてとっくにやめていたかもしれない。冬の北海道で遭難凍死していたかも知れない。
たかが二度目の鍵をなくしただけで、そのタイミングでふと「自分はもう老いている」と認識して、追いかけることも女優業もすべてやめて隠居してしまったくらいに、彼女の芯であり、すべてであったわけで。
もしかしたら、その鍵が心残りでかろうじて命がつながっていただけですらないかと思ってしまう。

わかる、僕も「好き」のために、仕事を頑張って、生きていこうと思えることがたくさんある。
同列にしてはいけないのかも知れないけど、そういうことなのかもしれない、としか思えなかった。

本作のキャッチコピーは「その愛は狂気にも似ている」だと見終わってから知りました。
人生をかけてでも追いかけたいものがある、入れ込みたいことがある。
その想いは狂気じみていてなんぼだろう、と思います。
他人から見たら狂っている、くらいがちょうどいいと思っています。

余談:鍵について
結局「一番大切なものを開ける鍵」ってなんやねん!だけずっとあるw

「鍵の君」が鍵をあずけていなくなり、そのまま本人に聴くことができない今、誰も知ることができないのである。
単純にあのカバンの鍵じゃね?という気持ちは一旦置いておいて…。

物語序盤~中盤にかけては、千代子よ記憶の鍵を開く鍵だったのかな、と思っていた。
鍵を受け取ったことで、当時の記憶を鮮明に思い出していって、あの頃の気持ちと記憶の鍵をひらくことができた…というような。

中盤以降の認識としては、彼女は鍵を2度無くしているわけですが、なくしている間の彼女は、鍵が手元にないだけで、「鍵の君」への思いが諦めがちになり離れていく。
となると「彼への想いを開ける」鍵にもなっていたんだろうな、これは『開ける』というより『つなぐ』が正しいのかも知れないけれど。鍵を心の支えにしていた、というか。

……けれどじゃあ「鍵の君」にとっては?彼自身にとっても「一番大切なものを開ける鍵」であったはずで。
と考えていたんですけど(書きながら)

あたりまえながら「物理的に大切なものの鍵」なら助けてくれただけの女学生には預けないわけです。
いや…万が一あのカバンの鍵であった場合、カバンは自分が、鍵は彼女が持つことで憲兵に捕まっても検分されないという思惑がなかった、とは言い切れないんですけど。
逃げていたところを助けてくれて数日匿ってくれた女学生、に彼がどれほど想いを寄せていたか、それが恋慕に近しい好意であったのか、その当たりを掘り下げることは一切できないわけですが。
壁にひっそりと像を残していたことも、手紙を向けていたことも、謝礼のそれなのか、気にかけていただけでしかないのか、一切は不明なわけですけども。
千代子があの鍵を心の支えにしていたのと同じように、彼も鍵を預けたこと、と心の支えにはしていたと思っているんですよね。

そのうえで、「一番大切なもの」とはなんだったのか
その鍵がそういう立ち位置になったうえで開かれるものは何だったのか、といえば「生きていく意欲」だったのかなぁ…と思っています。
一番…大事では、ある……。

余談:老婆について
あの呪いをささやき続ける老婆は何だったのか…と思っていたのですが。
あれは千代子があの姫の役をしていた時に、映画の中に出てきた演出・展開でしかなかったもの。
けれど、その後の彼女の人生において偶然にも現状を指し続けている呪いとなって引きずってしまったもの。
だったんだろうなぁ、とこれを書き始めてから咀嚼が完了しました。

余談:鍵の君の顛末について
あんなに千代子が執着して追いかけていたというのに、あっけない顛末だったなぁ…と思ってしまった。
軍人に拷問されて死んでいた。ただそれだけ。予想通りではあり、残酷な現実でもある。

ただ、それを聞いた立花さんが、最期まで彼女にそれを伝えず、話を聞いている最中も一切その素振りを見せなかったことが、とても素敵だった。
この秘密は立花さんと、井田くんと、観客の僕だけが抱える彼女に対しての秘密なんだ、と思えた。

余談:撮影と現実と記憶
どこまでが創作(映画の展開)で、どこからが現実なのか、特に前半は境界があまりにも曖昧で。
空襲で崩れた蔵の壁に描かれた「鍵の君」の絵が出てこなければすべて彼女の妄想でしかなかったのではないか、と思ってしまったレベル。

ただ、その境界も後半は理路整然としてきて(というか8割くらい現実の話をしていた気もする)

自分が作品内の展開の目まぐるしさに慣れてきたからかな、と漠然と思っていたんですが
立花さんの記憶も含まれ始めていたことと、単純に「最近のこと」だったからだな、という理解をしています。

千代子さんが、「あんなに好きだったのにもう顔もわからない」と話しながら泣き崩れるシーンがありました。
「鍵の君」との交流は女学生の数日の話だからおばあさんになってまで覚えているのは無理があるよなぁ。話しているうちに思いが溢れて泣くこともあるよなぁ。としか思わない場面。

ただ、映画〆の展開として、話すだけ話しきった後に倒れ、そのまま息を引き取った(と思われる)ことを思うと、体調もですが認知のほうも実は大分危うかったのではないかな?と。
簡潔に言えば認知症…とまではいかなくてもまぁまぁ年相応にボケていたのでは?

であれば、前半、まだ彼女が若かった頃(20代頃?)の話は、もうどこからが撮影の話でどこまでが現実か、などという記憶は彼女自身の記憶の中ではもう既に曖昧になってしまっていたのではないか。
そこに、立花さんが「◯◯の作品のシーンですね!」と相槌を打つことで、やっと視聴者(とカメラマンの井田くん)は「今の映画の話?!いつから?!」と突っ込める。それくらい現実の記憶と撮影の記憶が彼女の中ではもう混濁している。

一転、一度鍵をなくし、結婚し、主人の書斎で無くしたはずの鍵を見つけて…という一連の流れは、彼女の中でも記憶が鮮明だったのではないでしょうか。「彼を追いかける私」ではなく「己に起きたこと」ベースで前半ほどの目まぐるしい撮影と現実の転換もなく、非常に時系列が整理された状態でスムーズに話が進んでいく…。

あの前半の場面転換の目まぐるしさはそういう演出の意味合いもあったり、しないかなぁ?と思っています。
立花さんが立ち会っていた時期なので、前半よりもスムーズに話の軌道修正ができていただけ、という可能性もあるんですけども…w

余談:井田くんという装置
『舞台装置』として「カメラマンの人」の立ち位置が非常に絶妙であったな、と。
千代子と立花さんのどこまでが現実でどこからが映画の話なのか理由のわからない夢中な語り合いについていけずに突っ込む彼のお陰で、展開についていけない自分が作品に置いてかれずに済む。

中盤までは「どこからが映画の話?!」と突っ込んだり「SFやないかい」と呆れたりしている彼と一緒に、自分も「いやまじでそれな?!」という顔をしていたわけです。視聴者目線のキャラが居るってありがたい話。

それが、中盤以降、展開の目まぐるしさにも馴染んできた頃、彼も同じく慣れてきたのかツッコミを辞め、むしろ話に入り込んでいる。同じように自分も話に入り込んでいる、引き込まれ終わっている。
最後は、「鍵の彼」に会えなかった彼女を雑念も障害もなくまっすぐに思う気持ちもある。

彼がいなかったら、置いていかれたまま始終一歩引いて見てしまう可能性すらあったな、と思っていた。すげぇや。

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