2026-01-10

などらきの首

 ※これは、noteの転記です 

前2作同様長編だとおもっていたので短編集であることにびっくりした、というのはおいといて
感想文です
無論全編全然ネタバレです。

ゴカイノカイ

「痛いの痛いの飛んでけ」というよくあるおまじないが、本当にお呪いとして効果が出てしまっていた話。
どんな怪異や心霊なんだろう、と身構えながら読んでいたところあまりにもかわいい因果だったので拍子抜けする反面、水面下で暴力を振るっていた人の良さそうな外面だった小さい事務所の上司、という得意の人間の醜さ、という感じでよかった。

ところで、ニセマコトこと奈々がどこででてきた誰であったのか全くピンときていないんだよな…
誰………?これからの作品で出てくる子?
これまで(ぼぎわん・ずうのめ)で、もし出ていたのに失念していたなら教えてほしい…。

ところで、これ終盤不動産に物件を紹介されていましたが、今後事務所?を開いたりなどするんですか…?
と思っていたんですが他の人の感想を読んでいたら、どうやらここで斡旋された物件がぼきわんのときに真琴が済んでいた物件らしい。
そうなんだ。

学校は死の匂い

美晴、という名前を見て飛び上がってしまった。
シリーズ全作のずうのめでは、作中作にて(つまりすでに過去の出来事として)死んでいる人物なので…過去回想なのかな…と思っていたら全然ちゃんと、まだ存命だった美晴の小学生の頃の話。だった。
ずうのめで描かれる彼女は、物語導入のみに描かれる彼女自信の視点の描写のほかは、作中作での描写と真琴から語られる描写のみだったので、生きている彼女が見れることはとても新鮮だったな。

学校の怪談じみていた(実際小学校の七不思議である、という語られ方ではじまる怪異ではあった)けれど、きちんと事案で、きちんと胸糞で、きちんと後味が悪くてよかった。
この作家さんの描く、陽に属する人種の身勝手さが本当に嫌いで大好きで……(嫌だな、と心底思える描写をすることが好き)ぼぎわんの夫が本当にね、いい例です。
僕も、集団行動の輩同調が大嫌いで、そっちに溶け込めるタイプではあったけど…いや、年々嫌い具合が悪化しているから、学生当時は溶け込めてたけど今となってはまじで無理だな。

なので、そこに溶け込めずむりやり駆り出された挙げ句、事故で死んでしまった上で、それを自責過失として捏造された『彼女』のやるせなさに心底同情してしまった。
そのとおりに演出しよう、と何度も何度も死に続けていたことだけは理解できないけれど。そんな胸糞悪い状況、やり返したれよ、という感情が湧くタイプなので。
……なので、この話の終わりの後味の悪さは、後味がわるいはずなのだけど、非常に胸がすっとしてしまった。
死んでまで他人に付き合う必要はないもの、好きにするべきだよ(暴論)

それはそうと、琴子と美晴のチカラの明確な差がある(力量ではなく理解度)ことに驚いていた。
琴子はなんでも理解・把握できるほどの能力がある、スーパー強強すごすぎしごでき長女、なのだと思っていたので…w
『彼女』の存在も状況も知っていたけれど、喋っていた内容は感知していなかった琴子と、見えて、聞こえているもののその状況はヒントも込みで相当観察しないと理解しえなかった美晴。
美晴のほうが怪異…というか情などに入れ込んでしまうタイプなのかな。………だから、ずうのめで非常に対応することができずに、死んでしまったなろうな。

居酒屋脳髄奇譚

これを読んで、やっっっとこの本が「短編集」だと気づく。遅い
いや、前2篇は無関係なようで大きな1本の筋に最後に繋がるタイプなのかな、と思っていたのである。
この件を対応した「能力者の名前」は一切でてこなかったけれど、物言いといい振る舞いといい琴子だったのだろうな。

低能と認識している女と飲みの席に呼び出していびって楽しむクソ男3人の話、といえばそう。男性優位思想の男が全力で出してくる女を全力で不快にする表現が得意すぎる、本当に。
この本イチ不快!!!!!最高!!!!(???)

結局それでしか自己肯定感を感じられないクソなんですよね(それはほんとうにそう)というすべて論破していくきれいな切り返しにちゃんとスッとするんでいいんですけどね。
悲しい存在ではあるよな。死んだ後繰り返すのがそんな惨めな飲みの席で、それ以外の一切の記憶もなくて、その行為だけが一番満足感を得られてたのしい瞬間で、いつまでも繰り返したい宴だったわけだから。
人生としてこんなにも惨めで虚しいこともない。と、突きつけられることが一番の恐怖ではあるかもしれないな。

しかし、ぼぎわん・ずうのめ、のような命の危機を感じる怪異、ゴカイノカイだって要因はかわいかったけれど身体に間違いなく辛い痛みをうける怪だったし、学校は死の匂いにおいては現況は同じ死に方をさせられているなかで「毎晩のようにその席に座った客に罵詈雑言を浴びせる迷惑な霊」というのは、確かに甚だ迷惑ではあるものの、命の危機は一切なくて『怪異』としては可愛く思えてしまうし、そのようなものを祓う仕事も受けてるんだぁ、というのが新鮮だったかもしれないな…

なお、これのせいで今ドグラ・マグラを読んでいます(???)

悲鳴

全くかけらも比嘉姉妹がでてこないこの話の立ち位置はなんだったんだろうな、と思ってたんですけども…なにもかもが釈然とせず解決もせず不明のまま終わっていく話で…本当に何…と思ってたんですが…
『りーたん』ってお前かい!!!!!!!!!!!!!!!!
と、他の人の感想を見ていて気付いた。
ずうのめのお前かい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
そら何も解決せず釈然としないわ。何も解決していないもの……。
どうしても「陰鬱としていて仲間というものに溶け込めない孤立した女」というイメージで記憶しているので、「大学のホラー研究会で楽しそうに笑い、ホラーオタク先輩男たちにかわいがられている女の子」がそれと全く紐づかなかった…。

言霊のちからが強すぎると言うか……己が産んだ怪異は「ずうのめ人形」だけだと、思っていたんだろうな、まさか大学時代のあの時の不可解な事件も、自分の口からでまかせに言ったとおりに起きてしまった事件が、「ずうのめ人形」と同じく己の言霊によって引き起こされたものだとは思いも…
…いや、思い当たりはしたかもしれませんけどね。『あの時』のことを思い出して…。
だからこそ、確信をもって原稿を作って投稿を…したんだろうしな…そうだったな…そういう女だった。

ファインダーの向こうに

この本に置いて一番好きな話がこれです。ほっこりとして心温まるホラー。というベクトルのやつ。
他の作家さんを出すのはどうか、とはおもうのですが、例えば乙一さんのそれを彷彿とします。
間違いなくホラーなのに読了後が爽やかになる、というタイプ。あまりにも好き。

あと、「月刊ブルシット」のみなさんが、というか、戸波さんが、本当に本当に大好きなんですよ。
なので、またその言動が見れたという点においてもとても好き。
野崎と真琴の出会いの馴れ初め話でもあり、周防さんが野崎を同期扱いして信頼している出来事の一端を見ることができるのも良かったんですが、何より最初に書いた通り、この怪異が伝えたかったことがわかった時、の心の温まり具合ったらない。

というか、怪異自体も「怖いもの」ではなかったわけで。「不可解なもの」ではあったんですが。
いや…人は不可解なものに恐怖するものではあるから怖くはあるか…。
廃墟での撮影をしていたら物音がして(怖くはあるか)
そちらに向けてシャッターを切ったらまったく関係ない河原の景色が撮れて(怖くはあるか)
こつ然と心霊写真特集の古い雑誌がおちてきた(怖くはあるか………)
という不可解の連続であったわけですけども、起きた事件としては。

顛末としては、初心を忘れて荒んでいるカメラマンを励ましたいが、写真に映ることが苦手であったため思い出の場所を念写させ、本人も忘れていた心霊写真を投稿した雑誌を見せる、にとどまってしまった今は亡き女性の健気な行動であった、訳で。
『霊』のすべてが悪意を持っているわけではない、こういう形の怪異だってある。
これを突き止めた(何でもかんでも「恐怖現象」と解釈しない)ことが、真琴が本物たる信頼を野崎に抱かせるものであったな、とも思うし。

……まぁ、それはそれとしてそんなほっこり物語をオカルト雑誌には書けないので結果捏造話を頑張って作ることとなった、というオチも
後日談としての周防さんが横暴で荒んでるカメラマンを嫌いになれなかった、本人たちも忘れているであろう過去を思い出すことも、再びカメラマンとして様々な景色を撮影している明神さんも。
全部が明るくて、前を向けてとても好きな話だった。

などらきの首

これこれこれこれこれ~~~~!!!!となる話。
人を殺しめるまでに至るほどの不可解な怪異の話。求めているものはこれ!みたいな、そんな気持ちがあった。
どういう語源なのかまったくわからない造語も、説明されればなるほどと思えてしまう内容も。
全部全部、やっぱり好きだなあ、と思ってしまう。

話としては野崎の学生時代の話。
野崎の友人が、過去従兄弟にこっぴどく怖がらせられた田舎の怪談があり、説明できない不可解なものなんてあるわけがない、という信条だった野崎がその話を確かめに友人と一緒に田舎へと行き、事実を確認する。というもの。

ここまでず~~~っと、言うほどの怪異でもなく(『悲鳴』の言霊が一番の恐怖怪異、まである)並べられていた話であるため、これも野崎の推察通り、従兄弟が友人をこっぴどく怖がらせからかいたくてやったこと、ですべて説明がつくと思っていた。

化け物の首のミイラは作り物の偽物で
向かう途中に洞穴から覗き見たときにはまだあったそのミイラが数分後に現地にたどり着いたらこつ然となくなっていたというのは従兄弟の演出で
覗いたのも従兄弟本人のみならば「そこにある」というのは嘘で事前に持ち出していただけというトリックはそのとおりで
何も怖いことなんてない、説明のつかないことなんてない。

はずだった、わけで。

野崎と友人が現地に向かうときについて来た祖母。
ミイラの首を持ち帰っている従兄弟の現住所を聞いてきた祖母。
忽然と西瓜の提灯のみを残して消えた祖母、だったもの。

そして、半月後に不審死した従兄弟。

『ファインダー~』で野崎が『怪現象に軽い気持ちで関わってはいけない』と言っていたのは、この出来事が過去にあったからなんだな、という納得感があった。
友人の祖母、の姿を借りた『なにか』に野崎が従兄弟の住所を教えてしまったからこそ『なにか』こと、などらきはその首を取り戻し、従兄弟を殺してしまったのだから、と言える。
そうでなければ説明のつかない因果関係と不審死なのである。取り返しのつかないことをした、と野崎少年は思ったことだろうし、以降自分から軽々しく首を突っ込むこともなかったんだろう、と思う。

首をとりもどした、などらきは、今どこでなにをしてるんだろうか。

ちなみに何度か「他の人の感想で」と言っていたのはこちらの記事でした。
『28冊目:などらきの首』
自分が感想文を書く時、同時に人の感想文も読みたいと思っているんですが、さがせどもさがせども「あらすじをかいているだけ」+「おもしろかったの一言」で感想文記事にする人の多いこと多いこと、クソみてぇな記事しかみつけられなくて落胆することが多いんですが。
まぁ自分もうっかりするとそうなりそうではあるんですけど。
こちらの記事はちゃんと「感想文」でとてもよかった。
なんならこのブログみて気になった本があったら読むのもいいな、と思ったレベル。

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